サラダの彩りからピザやパスタ、ケチャップなど、さまざまな料理でおなじみの食材・トマト。もともとは、南米原産の直径1cmにも満たない小さな果実だったこの野菜は、ヨーロッパ人による「新大陸発見」以来、わずか数世紀の間に世界を一周し、「グローバルフード」として栄華をきわめている。そんなトマトについて、植物学的進化の過程(人間による品種改良がもたらした影響)や世界経済・政治との関わり、文化の中での描かれ方など、さまざまな切り口でリサーチし、その成果を展示と本にまとめた。

From salad to pizza, pasta, and ketchup, tomato is a familiar ingredient to various food cultures. This vegetable, originally a tiny fruit that was less than 1cm in diameter, had gone around the world in only several centuries after European discovered the New Continent, and now flourishes as a ‘global food’.

Food Atlas has researched different aspects of tomato, such as from botanical, economical, political, cultural points of view, and visualized the outcomes as an exhibition and a book.


Exhibition

トマトを進化の歴史や形態学、文化や社会問題などさまざまな切り口から見つめ、身近な食べ物のあまり知られていないストーリーを伝える展示。

会場には、色や形の異なる実をつける5種類の「エアルームトマト」(品種改良されていない、在来種のトマト)の鉢植えが置かれ、さらに展示会場となった静岡県浜松市の地元産のトマトやトマト料理を味わうコーナーももうけ、「グローバル」と「ローカル」という相対する2つの概念を、感覚的に体験する空間をつくり出した。

企画・制作:Food Atlas
展示会場:ギャラリーあ(静岡県浜松市)
展示期間:2015年7月18日ー8月2日

The exhibition highlighted different aspects of tomato such as history of evolution, morphology, culture, or social issues, telling unknown stories of this familiar food. Potted tomato plants from five different heirloom breeds decorated the space. We collaborated with local farmers and sold their tomatoes grown in the Hamamatsu area. Visitors were able to taste them in the exhibition space.

The exhibition offered visitors an opportunity of experiencing two confronting concepts of tomato, ‘global’ and ‘local’.

concept & design:Food Atlas
site:Gallery A (Hamamatsu, Shizuoka)
date:18/09/2015 – 02/08/2015

Chapter 1|トマトの歴史 トマトの原種から、現在の無数の栽培品種が誕生するまでの歴史をたどる。タイムライン上では、時代ごとにトマト栽培の転機となるような品種とそれにまつわるストーリーを紹介した。
Chapter 2|トマトの植物学 リサーチを行った日本(静岡県浜松市)とオランダ(アムステルダム)の2都市で手に入った、さまざまなトマトを写真で紹介。拡大されたトマトの輪切りスライスからは、普段あまり気づかないような品種ごとの違いと多様性を見ることができる。
Chapter 3|トマトと消費 「グローバルフード」として、世界中で大量生産・大量消費されるトマトを、社会・経済の視点から見つめた。加工品としての消費が多いのもトマトの特徴で、凝縮され、コンパクトになったことで移動が加速し、それに伴う環境的・人道的・社会的問題が世界のさまざまな地域で見られるという事実も浮かび上がる。
Chapter 4|トマトと文化 トマトにまつわる、世界各地の文化や風習などを紹介。有名なスペインのトマト祭りにはじまり、イタリアでの伝統的な干しトマトの作り方や、トマトの怪人が出てくる映画など、多岐にわたるトピックを見ると、トマトが単なる食べ物の枠を超えて、わたしたちの生活や文化に根差していることがわかる。
5. トマトを見る・味わう 「グローバルフード」・トマトをローカルなレベルで体感する。会場の地元・浜松近郊のトマト農家やイタリアンレストランの協力により、来場者にローカルなトマトを味わってもらった。また、会場内には数種類の「エアルームトマト」(品種改良されていない、在来種のトマト)の木を配し、実際に実をつけている様子を来場者に楽しんでもらった。

Book

「グローバルフード」として世界を席巻するトマトの、植物学的進化・経済社会問題の2つの側面からのリサーチから浮かび上がるストーリーを、写真やイラスト、マップとともに伝える本。2015年に静岡県浜松市のギャラリーあで開催された「わたしたちのたべもの展 -トマト編-」をベースに新たなリサーチを追加し、展示よりもさらにオリジナリティの高いビジュアルブックとなっている。

A visual book about tomato that conquers the world as a ‘global food’. It mainly focuses on two aspects of; botanical evolution of tomato, and economical-social problem of tomato growing and trading. The book tells stories of these two themes with pictures, illustrations, and maps. The book is composed of some extracts from the exhibition ‘Our Food – Tomato –‘ in 2015 at Gallery A (Hamamatsu, Japan), and additional research conducted after the exhibition both in Japan and the Netherlands.

「1. トマト、理想の果実」人間による品種改良によって、味だけでなく姿・形もより大きく(あるいは小さく)、カラフルに進化してきたトマト。オランダと日本で集めた34のサンプルを収録し、形態学的手法でビジュアル化した。世界に8000以上あると言われるトマトの全品種からするとほんの一握りではあるが、人間の尽きることのない欲望をかいまみることができる。
「2. 濃縮したトマトに隠されたもの 」トマトの生産量が世界で最も多い国は、トマトを使った郷土料理が有名なイタリアでもなく、ケチャップが国民的調味料であるアメリカでもなく、中国であるという、やや意外な事実。そこに隠された、「グローバルフード」・トマトのストーリーを、オランダと日本で集めたトマト加工品のラベルから読み解く。

「わたしたちのたべもの」プロジェクトについて

グローバル化や食品産業の発達から、自分が口にするものの出所がわかりにくい時代になりました。いっぽう「食」は、私たち誰もが日常的に行う行為であり、生きていくためには必要不可欠です。

食は大昔から、政治や文化、経済などと深くつながっていて、土地で採れるものを食べるというローカルな側面もありつつ、世界的な時代の流れとも密接に関わってきました。また、食材は食べ物であると同時に、生命でもあります。私たちは、食べることで他の生命のエネルギーをもらっているのだということも、大量生産の食品を食べる際には忘れがちです。

「わたしたちのたべもの」プロジェクトでは、誰もが日常的に食べる食材、食にまつわる行為や現象をリサーチをし、私たちの生活がどのように世界や自然とつながっているか、ということを展示や出版物、プロダクトなど、さまざまなビジュアル・メディアを通して伝えることを目指します。

About 'Our Food' project

We live in a time when it’s very difficult to know where our food comes from due to the globalization and the progress of food industries. At the same time, eating is an everyday act and essential for us to survive.

Food has been deeply connected to politics, culture, and economics for a long time. It has been locally harvested and consumed but on the other hand, greatly affected by the global flow of the times. Food is what we eat and also the lives of other living things. Mass-produced food products often make us forget the fact that we receive energy of other lives.

In ‘Our Food’ project, we research ordinary ingredients that everyone eats for daily meals, or acts and phenomena around food. The project aims at communicating how our lives are connected to the world and nature through various visual media such as installations, publications, and products.

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